最近のかめさんスピーカー・その2 　自作スピーカーをまた少しいじってみました。 　今回も随時記事を追加して行けるように、日付は文章中に表記してあります。

2011.08.27 　ツイーターの置き場所をあれこれと変えているうちに､出来るだけ高い位置の方が気持ちの良い音が出る気がしてきました。なんとなーく音の広がり方が良いような感じがします。 　というわけで、ツイーターをバスレフダクトの上に乗せてみることにしました。 　転がって落ちないように、ひもでしっかりと固定してあります。

黒いフェルトが手に入ったので、ツイーターの前面もあまりもこもこさせずにすっきりとさせておきました。 　音の方もさらに広がりやすくなった……と、思うことにしておきましょう。 　バッフル面がラウンド状になるように、大きさを少しずつ変えながら2枚重ねに貼ってあります。

(↑カーソルを乗せると、比較用にひとつ前の状態が表示されます) 　ネットワークの調整もやり直してみました。 　ツイーターのもこもこを外した分、抵抗を増やしてボリュームを下げてあります。

今回はコイルの設定を大きくいじって、深いクロスというのにしてみました。 　ツイーターとウーハーの音の重なり具合を表す時に、深い浅いという言い方をします。 　今まではツイーターとウーハーの位置が近かったために、逆相成分が干渉して大きなディップが生じやすかったので、出来るだけ音をかぶせない浅いクロスにしていました。 　アルミコーンの高域のピークを目立たなくするために、早めにカーブを落としたかったのもあります。 　しかし今回はツイーターとウーハーが十分に離れているので干渉がおきづらく、アルミコーンのピークも思ったほど気にならないことが分かってきたので、深いクロスにしてみたのでした。 　自作スピーカーの教科書には「変調歪みが発生しやすい」と書いてある部分なんですが、自分で体験した感じでは「位相合わせがシビアになりやすい」ということでもあるような気がしています。

70cmくらいの距離で測定した図です。 　150cmくらい離れた普段の視聴位置で測定した図です。 　ツイーターの位置に合わせてマイクの位置も変えたりしているので、前回までとは変わった感じのカーブになってしまいました。 　でも全体のバランスと、ツイーターのつながり具合は良い感じになっていると思います。 　ウーハーとツイーターの干渉が少ないせいか、どの位置で測定しても安定してまっすぐな線が出てきてくれるので、測定していて楽しかったです。 　音楽をかけてみても、深いクロスにした効果なのか変なバランスだなーと感じることが少なくなりました。 　ちょっと音が濁ったような気もしますが、アルミコーンの細めの音に厚味が出てきたと考えれば、かえって良くなったんじゃないかと思います。

というわけで完成した新しいかめさんスピーカー。 　小さなツイーターがちょこんと上に乗っかっているので「親子かめさんスピーカー」と名付けました。 　かめさんの名前通り、次々と姿を変えていくスピーカーなのでした。

2011.09.03 　ツイーターの位置をまた変えてみました。 　基本的には一個前の位置なんですが、下駄を履かせて少し背を高くしてあります。 　これでそこそこ気持ちよく鳴る高さと、設置の安定性が両立できたんじゃないでしょうか。 　前回書いた位相合わせについてですが、ツイーターを遠ざけてもだめな時はだめな測定結果が出てしまうみたいでした。 　ただ実際に音楽をかけてみると、(ツイーターが近い場合も含めて)測定結果ほど極端なへこみが出ている感じはしないです。 　マイクでは逆相で消えてしまう音も、人間の耳にはちゃんと届いているのかなぁと、また根拠のないことを考えてしまうのでした。 　反対に同相で合成されることを期待して浅いクロスでつないでいた時も、つなぎ目のところで中抜けしたような音に聞こえたりしてしまいます。 　位相についてはある程度割り引いてネットワークを組むようにした方が良いのかも知れないですね。 　それから振動板保護用の細い棒は、思いきって取ってしまいました。 　振動板を触ってみると思ったより強度があるみたいだったので、気をつけて使っていればへこませてしまうこともないでしょう。 　見た目もすっきり。心なしか音もすっきりしたような気がしてしまいますね。 　細い棒なので、特性はほとんど変わっていないと思います。

(↑カーソルを乗せると、比較用にひとつ前の状態が表示されます) 　測定ではウーハーとツイーターがきれいにつながっていても、聴感ではそうでない場合があることがわかってきたので、もう一度ネットワークの調整をやり直してみました。 　20Hz〜20kHzのサインスイープを再生して音が波打っている部分を探します。 　どうやらツイーターの立ち上がりが急すぎる感じだったので、なだらかな立ち上がりになるように設定を変えておきました。

(↑カーソルを乗せると、比較用にひとつ前の状態が表示されます) 　60cmくらいの距離で測定した図です。 　(↑カーソルを乗せると、比較用にひとつ前の状態が表示されます) 　150cmくらい離れた普段の視聴位置で測定した図です。 　グラフでは分かりづらいですが、ツイーターも違和感なくつながってくれました。 　ついつい測定に頼りがちですが、やっぱり最後は自分の耳で判断しないと駄目ですね。 　測定と聴感と、あとはシミュレーション。どの部分をどれで判断するかというのが難しいところです。

2011.09.04 　サインスイープを再生した時に「ほわーん」とした音が途中に乗ってくるのが気になったので直してみました。 　以前は金属製のオーブントースターが原因としていたのですが、それとは別に何かあるみたいです。 　色々試してみると、どうやら長すぎるダクトの共鳴が原因のようでした。 　というわけでダクトの途中に吸音材を入れてみました。 　前回は内周に貼り付けるタイプだったのですが、今回は軽くて密度の低い素材を充填するタイプにしようと思います。 　写真のようなティーパック用の袋を用意して、お茶っ葉の替わりにわたぽこを入れたら完成です。 　これをダクトの途中にひもでぶら下げてみました。

(↑カーソルを乗せると、比較用にひとつ前の状態が表示されます) 　音を出しながら効き目の出やすいポイントを探って位置を決めてみました。 　箱の中に貼る吸音材と違って、外からひもの長さで調整できるので作業も楽ちんです。

(↑カーソルを乗せると、比較用にひとつ前の状態が表示されます) 　60cmくらいの距離で測定した図です。 　(↑カーソルを乗せると、比較用にひとつ前の状態が表示されます) 　150cmくらい離れた普段の視聴位置で測定した図です。 　「ほわーん」とした音も消えてくれて、目的は達成できました。 　しかしダクトの効きは悪くなってしまったようです。 　これを直すためにダクトを短くしたりして、また堂々巡りにはまり込んでしまったのですが、結局は今の長さで行くことにしました。 　特性で見るほど低音不足に感じなかったことや、緩やかに立ち上がる低音の方が耳に優しいんじゃないかということ。それからかめさんスピーカーはダクトが短いとかっこわるく見えてしまうからです。 　あとはアンプのトーンコントロールをちょこっといじると調度良いかもしれないですね。 　色々と都合の良い解釈も入っていますが、しばらくはこの設定で様子を見てみたいと思います。

2011.09.11 　ダクトの中に詰め物をするのは、どうも根本的な解決になっていない気がするのです。 　何もわからなかった頃に、ダクトの直径を7cmなんてよくばって設計したのがそもそもの間違いなのでした。 　ダクトの音をシミュレーションできるソフトに数値を入れてみると、ダクトは短ければ短いほど余計な音が付かないみたいです。そして太くて長いダクトは、細くて短いダクトに置き換え出来るみたいでした。 　もちろん極端に細くすると密閉型と変わらなくなってしまうので、限度はあるようですが。 　そんなわけでダクトを新しく作り直してみました。 　内径は4.2cm。長さは7.7cmです。バスレフの設定としては48Hzくらいとなっています。 　素材は厚紙をのりで固めながら筒状に巻いた物。外側には3mmのゴムシート、さらにその外側に吸音材を5mmほど巻き付けてダクトの防振を強化しておきました。内径4.2cmに対して、ダクト全体では7.5cmくらいになっています。 　この太くなった新しいダクトを、以前のダクト用の穴にぎゅっと押し込んでやれば設置完了です。 　外側が吸音材で柔らかくなっているので、調度良い具合に引っかかってくれました。

(↑カーソルを乗せると、比較用にひとつ前の状態が表示されます) 　以前よりは密閉寄りの箱になっているので、吸音材も増やしておきました。 　前回使ったわた袋を4つ用意して、箱の角の所に1つと、天井からひもでぶら下げる形で3つ入れておきました。 　それからユニット取り付け穴の、ざぐり加工が届いていない5mmくらいの部分も、共鳴管にならないようにフェルトを貼っておきました。 　今回新しいダクトのテスト中に、ダクトを先っちょだけ引っかけた状態で測定していたのですが、結構高い周波数でピークが出ていました。 　板厚程度のわずかな長さでもなかなか馬鹿に出来ないのです。

どうも中域にうるさい音がある気がします。PCのイコライザーで2kHzと4kHzを下げてやると調度良い感じです。 　10cmくらいの近接で測定してみると2kHzあたりにピークがあるようなので、これが原因ではないかと予想してユニットに手を加えてみることにしました。 　以前ウッドコーンの時に試した制振材を貼り付ける改造です。 　写真の赤い矢印はエッジの内側のへりの部分に貼った制振材です。 　青い矢印はアルミコーンとエッジが接着されているあたりです。 　この2箇所にそれぞれ4枚ずつ、計8枚貼り付けてみました。 　素材は自転車のタイヤチューブ用のブチルゴムです。空気を入れてふくらます物なので、制振材に必要なやわらかさはありそうです。

(↑カーソルを乗せたり外したりすると、制振材のあるなしが切り替わります) 　10cmくらいの距離で測定した図です。 　写真の赤の位置に貼ったゴムは、図の赤のあたりに効いてくるみたいでした。青も同様です。 　赤の位置に貼ると、2kHzのピークが右へ移動する傾向のようです。 　青の位置は、6kHzのピークをつぶす効果があるみたいです。 　どちらも貼りすぎると全体的に能率が下がっていくので、あまり貼りすぎるのも良くなさそうです。 　アルミの部分にもゴムを貼ってみたのですが、6kHzのピークが下がるくらいで、特別に効果的というほどではなかったです。 　アルミだから振動板自体がもっとカンカン響いているのかと思っていましたが、そうでもないみたいでした。

実際は図のような感じで貼ってみました。 　エッジの動きを邪魔したくなかったので、アルミのはしの部分のみです。 　ゴムの長さや貼る位置をちょっとずつずらして、共振が分散するようにしてみました。 　はしの部分だけですが、2kHzのピークにも少しは効いているような気がします。

(↑カーソルを乗せると、比較用にひとつ前の状態が表示されます) 　ウーハーのピークが少し右に移動したっぽいので、ツイーターとのクロスも高めに持って来ることにしました。 　どうもこのツイーターは4kHzあたりが無理なくつなげる限界のような気がするのです。バッフル効果とか色々な要素はあると思いますが、コンデンサーをもりもり入れても、その辺りからだら下がりになる感じがしています。 　というわけで、クロスオーバーは4kHzに。 　せっかくなので1種類しか買わなかった高価なコイルがはまるように、インピーダンスの値をやりくりしてみました。

(↑カーソルを乗せると、比較用にひとつ前の状態が表示されます) 　60cmくらいの距離で測定した図です。 　短いダクト、制振ゴム、ネットワークの変更…それぞれの効果はしっかりグラフに出ているんじゃないかと思います。

今回はこんな感じで終わりにしたいと思います。 　毎回思っていることですが、今度こそもういじる場所はないんじゃないでしょうか。 　長すぎるダクトだとか、高すぎる位置のツイーターなどなど、極端な部分が減ってオーソドックスな方向でまとまって来ていると思います。 　ネットワークもシミュレーション上はインピーダンスのカーブがなだらかで、無理な数値は入っていないはず…… 　聴感でも今のところは不自然な点は無いですが、たまにヘッドホンと聴き比べてがっかりしてしまう部分はありますね。 　短いダクトも、これはこれですっきりした外観でかっこいいんじゃないでしょうか。 　あとはホコリよけを付けたいところですが、ハンカチをかぶせると低音ががくっと減ってしまったので、何か別の手を考えたいと思います。

とりあえずこんな物を作ってみました。 　針金を曲げて作った土台に金網を乗せた物です。 　ダクトの出口と金網の間には十分な空間が出来ているので、音への影響はほとんど無いはず…… 　その分ホコリも入りやすそうですが、10年くらいに1度ダクトを外して大掃除するのも良いでしょう。 　それくらい長く使えたらいいですね。

2011.09.17 　金網だと気のせいかキンキンした音が付いてしまって、耳が痛い感じがしてしまいました。 　ダクトの防振には気を遣ったつもりでしたが、演奏中に指で触れてみると結構びりびり震えているようです。この振動が金網に伝わっているのかもしれません。 　というわけで金網はやめて、コルクの板でフタをしておくことにしました。 　使う時だけこれを外すことにします。 　ついでにダクトの防振強化で、塩ビパイプのリングを外側からはめ込んでおきました。

2011.09.18 　ユニットの制振材を少し増やしておきました。 　あまり細切れにしないで大きい塊にした方が制振効果が大きいようにも思えますが、これはこれで効果はあったみたいです。 　重くしすぎて音が悪くなる感じは、今のところは無いみたいでした。 (←カーソルを乗せると、比較用にひとつ前の状態が表示されます)

ツイーター用のコンデンサが4.7+2.2の並列接続になっていたところを、6.8μFの一個で済むようにしておきました。6.9というのは売ってないので、6.8です。 　一個になっても特性は一緒なのですが、音は微妙に違うような気がします。 　ウーハーでたまたま10.0の一個使いになった時に、アタック音なんかが「ぱーん！」と気持ちよく揃って出て来る感じがしたのです。これをツイーターでも試してみたのでした。 　それと以前10個くらい並列を増やしまくっていた時期に、音があまり良くなかった印象が強く残っているのもありますね。 　メーカーはニッセイ電機の物を使用しました。 　音の方はちょっとだけ良くなった気がします。 　ぴしっと揃って余分な音が付かないので、ツイーターが余計な存在感を出さなくなったように思いました。 　まぁ、このあたりになってくると自己暗示の世界かもしれないですね。 　回路図がすっきりなので、音もすっきりです。

2011.09.24 (←カーソルを乗せると、比較用にひとつ前の状態が表示されます) 　ダクトの防振をさらに強化しておきました。 　ダクトが小さくなったので、その分振動も集中してしまうのかも知れないですね。 　でもこれでかなり振動は少なくできたと思います。 　あとはダクトを天板にしっかりと接着してやると良さそうですが、気が変わっても交換できなくなってしまうのと、吸音材の出し入れにも使える穴なので、取り外しできる構造は残しておくことにしました。

(↑カーソルを乗せると、比較用にひとつ前の状態が表示されます) 　ツイーターの音量を0.4dBくらい上げることにしました。 　ツイーターは弱すぎるともこもこしたつまらない音になるし、強すぎるとしゃかしゃかした耳障りな音になってしまいます。調度良いところを探すのが難しいですね。 　今回は以前買った高価な抵抗が使える数字だったので、音質的にも少し良くなっていると思います。

ツイーターの音量を上げたので、微調整としてバッフル効果を抑えるためのフェルトを復活させておきました。 　ちょっとだけツイーターの音量が下がるのもあるのですが、バッフルが出す余計な音が減る効果もある気がします。音のごちゃごちゃ具合が整理されるというか…… 　ついでにウーハーのフレーム部分にも、同じようにフェルトを貼っておきました。 　こちらは特性的にはほとんど効いてないですね。気休め程度です。 　それからコルク製のフタをダクトにしていると、昼と夜の温度差で箱の中が結露してしまうかも知れないので、空気穴を作っておきました。 　ちょっと気にしすぎかも知れませんが、これから冬になるので用心しておくことにしましょう。

というわけで時々思い出したようにいじりたくなるかめさんスピーカーなのでした。